2008年6月24日火曜日

クラウドコンピューティングで健康管理の時代へ

 前回「ネット・トピックス: Nike+iPodはけっこうヤミツキになる」でNike+をご紹介した。

 Nike+はWeb2.0技術と健康を結びつけた画期的な試みだが、現状ではシューズと一体化したランニング情報の管理しかできず、健康全般にまでは及んでいない。だがすでにWeb世界の次なる大陸は健康・医療産業だというのはネット業界の誰もが想定している。当然、いつ、Google Health(グーグル健康)が登場するかというのは、待ちわびた状態だったのだが、今年の5月19日に予想通り、「Google Health」が発表された。

 「Google Health」は現状、英語のみのサービスで、医療機関の紹介といった内容的にも日本人向けにはできていないが、日本人でもGooleのアカウントがあれば利用できる。

 「Google Health」は個人の身長体重・病歴・服用中医薬品など個人の健康情報を登録し、管理するためのサービスだ。医療機関や薬の情報の提供もあるが、関連広告は掲載されない(当分掲載されない)。

 現状のGoogle Healthをざっと見たところでは、日本でときおり問題になる複数薬剤の混乱整理といった医療的なアドバイスさえ含まれていないようだ。だが、当然そういう健康指針への期待がすぐに連想されるように、将来的には医療情報を有料でカスタマイズすることもできるだろう。また、医療機関からも治験のためのオファーをこうした健康ポータルから提供することも可能になるに違いない。

 従来のGoogleのビジネスモデルは、Web2.0の先端と言われながらも実際には広告業に過ぎなかったのだが、「Google Health」をきっかけに個人カスタマイズした情報提供の新しいビジネスモデルも期待できそうだ。

 さらにNike+のように、専用のガジェットが用意できれば、日々の血圧管理もWeb上で自動的にできるだろうし、体重管理やメタボ改善なども可能だろう。ビジネスマンなら腹回りに特設のメタボセンサーを付けてGoogle Healthを利用するという未来も想像できる。また、アスベスト被害や薬害被害など従来ならマスメディアで取り上げられるまでわからなかった集団的な被害なども、Web2.0的な健康情報共有から自然に探知されることもありうるだろう。

 問題は当然ながら、健康といった究極の個人情報までクラウドコンピューティングにしていいのだろうかというあたりまえの疑問だ。医療は保険にも関連するし、昨今の日本のWeb情報漏洩ニュースを思うと、Googleだから健康情報は大丈夫だとまで安心することはむずかしいだろう。


Google Healthの健康・医療情報はまだ英語のみ。サービスとしてもベータ版なので、今後は徐々に充実するとともに、各種の個人情報問題の批判も受けることになるだろう。